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Motivation

バイオフィルムは菌などの微生物による集合体で[1],身近な例としては川底の石に付着するぬめりがあります.微生物はバイオフィルムを形成することで,エサ不足や抗生剤による攻撃など単独では生存できない環境を乗り越える様々な機能を集団的に発揮します.各個体の計算資源が極めて限られ,集団内のごく限られた範囲の状況しか知り得ないはずの微生物による集団が,あたかも1つの生物のように洗練された振る舞いを発揮できることは大変興味深い点です.バイオフィルム形成によるしぶとさ向上のメカニズムを解明することは,生物学や医学のみならず,工学的にも「不測の事態でもダウンしないしぶとい工学システム」の設計論構築に大きく資すると期待できます.

Approach

本研究は,枯草菌のバイオフィルムに着目しています.このバイオフィルムはエサが十分ではなくなると,菌の増殖による動径方向の拡大とその停滞を交互に繰り返す振動的拡大現象[2]を見せます.これは,エサ不足に陥りやすい中心部の個体群が餓死することを防ぎ,集団としての機能を維持するという優れた振る舞いです. 本研究ではこれまでに,この現象に内在するメカニズムの最も重要な部分を抽象的でシンプルな数理モデルとして抽出しました[3,4].現在はそれを群ロボットなど様々な工学システムで活用できる制御則として再構築することを目指しています.

[1] Flemming, HC., Wingender, J., Szewzyk, U. et al. Biofilms: an emergent form of bacterial life. Nat Rev Microbiol 14, 563–575 (2016). https://doi.org/10.1038/nrmicro.2016.94

[2] Liu, J., Prindle, A., Humphries, J. et al. Metabolic co-dependence gives rise to collective oscillations within biofilms. Nature 523, 550–554 (2015). https://doi.org/10.1038/nature14660

[3] Taishi Mikami, Munehiro Asally, Takeshi Kano, Akio Ishiguro; July 29–August 2, 2019. "A reaction-diffusion model for simulating the oscillatory expansion of biofilms." Proceedings of the ALIFE 2019: The 2019 Conference on Artificial Life. ALIFE 2019: The 2019 Conference on Artificial Life. Online. (pp. pp. 218-219). ASME. https://doi.org/10.1162/isal_a_00164

[4] Taishi Mikami, Munehiro Asally, Takeshi Kano, Akio Ishiguro; July 13–18, 2020. "One-dimensional reaction-diffusion model for intra- and inter- biofilm oscillatory dynamics." Proceedings of the ALIFE 2020: The 2020 Conference on Artificial Life. ALIFE 2020: The 2020 Conference on Artificial Life. Online. (pp. pp. 712-714). ASME. https://doi.org/10.1162/isal_a_00261